ブッダのことば(10月)
©Matsumoto Eiichi
「空」の思想を唱道した最大の論者は龍樹で、二世紀の人という。
彼は主著の「中論」で「空」を存分に説いているが、空を理解する大きな前提として、私たちの思考、理性、言葉に対するインド的な(そして東洋的な)不信の姿勢を見ておいたほうがいい。
比喩を用いて考えてみよう。ここに坂がある。下から見上げると「上り坂」であり、上から見下ろすと「下り坂」である。
蟹が横切って行ったら「平ら」である。私たちは上り、下り、たいらというレッテルを用いて上り、下り、平らというレッテルを用いて、意思を通じ合っている。
しかしレッテルは観念であり、思考の産物である。
旅に出て自分よりすぐれた者自分と等しい者と出会わなかったら一人で道を行け真実を知らない愚者を道ずれにするな
『ダンマパダ』6
更新日:2022.10.05