松本榮一のインド巡礼(その2)

50年前のブッダガヤ

   

私がブッダガヤで暮らし始めたのは、1971年のことだった。今から52年前である。

ブッダがお悟りを開いた、ブッダガヤの地に、しかも日本の仏教界が力を合わせて作った日本寺の初代駐在員として滞在する栄誉を受けたのは、まさに仏様の加護があってのことだった。

写真に写っている村の人々は、考えられないほどの貧しい暮らしだったが、よその国から来た私たちに、心から接してくれるのだった。民族や境遇の違う中で、人と人が触れ合う温かみは、初めて異郷に暮らす私の心を温かくしていった。

日本寺の掃除や、夜警などを受け持つのは、寺が雇い入れた村人である。祭りの時、それらの人々の家に招かれ、なけなしのお金で買ってきたチキンのシンプルで旨いカレーを食べた時、私も村人になったような感じがした。

©Matsumoto Eiichi
 

松本 榮一(Eiichi Matsumoto)

写真家、著述家

日本大学芸術学部を中退し、1971年よりインド・ブッダガヤの日本寺の駐在員として滞在。4年後、毎日新聞社英文局の依頼で、全インド仏教遺跡の撮影を開始。同時に、インド各地のチベット難民村を取材する。1981年には初めてチベット・ラサにあるポタラ宮を撮影、以来インドとチベット仏教をテーマに取材を続けている。主な出版、写真集 『印度』全三巻、『西蔵』全三巻、『中國』全三巻(すべて毎日コミニケーションズ)他多数。

更新日:2023.06.02