松本榮一のインド巡礼(その1)

ブッダの生涯

2023年の今日、インドは中国を抜いて世界一の人口を抱えることになった。

十億を超える人口の中、ほとんどの人はヒンドゥー教徒か、イスラム教徒である。

実はインドの仏教徒はとても少ない。ヒマーラヤや、ラダックのチベット仏教系の人々、それと憲法草案を作ったアンベートカル博士の提唱したネオ・ブッディスト(新仏教徒運動)と、非常に限られた仏教徒が存在するのみである。仏教はむしろスリランカや、ミャンマー、タイといった周辺地方に今も栄えている。

そんな仏教だが、ブッダのお悟りの地ブッダガヤは、アジア各地からの巡礼で大賑わいである。百寺を超えるアジア各地の寺院が、ひしめきあっている。インドの中に別の国があるようである。

悟りの町ブッダガヤだけでない、誕生の地ルンビニー、初めて教えを説いたサールナート、お涅槃の地クシナガラの四大仏跡には、アジア各地からの巡礼が絶えない。

この四つの聖地はブッダがいよいよ涅槃の時、侍者のアーナンダの求めこれらの聖地を作ることを許したと伝えられている。この聖地をめぐることでブッダの生涯を追憶することができるのである。

そして仏教徒の少ないインドだが、先ほどのアンベートカル博士のつくったインド憲法にも、ブッダの崇高な理念が確実に入っているといえるだろう。

©Matsumoto Eiichi

 

松本 榮一(Eiichi Matsumoto)

写真家、著述家

日本大学芸術学部を中退し、1971年よりインド・ブッダガヤの日本寺の駐在員として滞在。4年後、毎日新聞社英文局の依頼で、全インド仏教遺跡の撮影を開始。同時に、インド各地のチベット難民村を取材する。1981年には初めてチベット・ラサにあるポタラ宮を撮影、以来インドとチベット仏教をテーマに取材を続けている。主な出版、写真集 『印度』全三巻、『西蔵』全三巻、『中國』全三巻(すべて毎日コミニケーションズ)他多数。

更新日:2023.05.02