仲香織の今どきデリー②

インドで子育て① (出産編)

私は、2016年にデリーで出産しました。初めての出産に日本かインドかと悩む事はあまりなく、割とすんなり、インドで産むと決めました。最大の理由は、経験としてインドで出産してみたかったからです。

デリーに住んでいる日本人がお世話になる病院は、FortisMaxApolloなどが大型病院が有名です。医師のレベルは非常に高く、信頼できる病院です。

インドで帝王切開率は異常に高いです。周りのインド人は、妊婦本人が計画的出産をする為にだとか、痛いのが嫌とか、また、病院側が、自然分娩ではあまりお金にならないから難癖つけて帝王切開に持っていくなどと、実際の所はわかりませんが、個人的にはかなり安易に帝王切開を選択しているように思えてなりません。勿論、避けられない個々の事情もあるかもしれません。

先進国での「適正とは言えない帝王切開」は増えているそうです。一般的に低所得層の自然分娩率は高く、インド政府の病院では、自然分娩だと一切お金がかからないし、回復も早いし、私のネパール人のメイドも、当然の如く自然分娩でした。前日まで掃除の仕事をこなし、出産後1か月以内には仕事復帰を果たしていました。

私も、出産2か月半後に公演を控えているおり絶対出演したい気持ちと、それ以前に、一般に鼻からスイカが出るようなと形容される痛みを折角のこの機会に体験しておきたく、絶対に自然分娩で産みたいと考えていました。上記の有名な病院は、金儲け主義プンプン。初期の検診の段階で、 自然分娩を積極的に推奨している病院をネットで調べ、そして、その病院で無事に自然分娩で出産したのでした。

日本では、出産後数日は病院で入院しますが、インドでは、次の日には退院です。赤ちゃんを抱っこして、家に向かう車の中から見える外のインドは、薄汚れて見え、完全に別世界でした。これは、もう赤ちゃん連れて日本に帰ろうと、ぎゅーと赤ちゃんを抱きしめた記憶があります。(しかし、未だしぶとくインドにいますが。。。)

出産エピソードは笑えます。分娩室に入るとき、無言で渡されたものを、紙の帽子と思って、かぶると、紙パンツだったらしく、ナースに、違う!!と取られたり、分娩室でバランスボールに座って、陣痛がはじまると座って弾ませられたり、最後はインド人に馬乗りでおなかを押され、無事、息子が誕生しました。

インドは、法律で妊娠中に医師が性別を告げることを禁止しています。検診の時、毎回「私は、赤ちゃんの性別は尋ねません」にサインさせられました。しかし、日本で一度検診し、性別は男の子と確認済みでした。女の子が欲しかった主人。僅かな希望の胸に、出産準備で購入している青い服の中に12枚ピンク色が混ざっていました。誕生した時のちょっとがっかりした目は見逃しませんでしたよ。でも、今では、息子にメロメロです。

通常、インドでは、男の子を望む声を良く耳にします。女の子は結婚の時にも持参金がかかる場合が多いし、働き頭にもならないし、女の子が生まれてると殺してしまうなんて悲しいケースもある為、出生前の性別の確認が禁止されています。

最近では、モディ政策の1つ「Beti Bachao, Beti Padhao(女の子を助けろ、学ばせろ)」をスローガンに、インド全土の女性の地位向上への意識が向上しているようにも見えます。

大ヒット映画Aamir Khan主演のDangalも男の子が欲しくて仕方がなかった元レスラーが、娘しか生まれない自分の境遇を嘆くが、一転、娘を世界的最強のレスラーに育てるというサクセスストーリーでした。

男性の中に混じってバリバリ働く女性、車の運転をする女性、おしゃれとしてのショートカット姿の女性を目にするたびに、インドは随分変わったんだなあと日々実感しています。しかし、社会を変えるのは容易いことではありません。長い列の横から堂々と横入りする女性に文句の言えない男性軍、逆に平等ではない現状を肌で感じます。残念ながら、恐らく、男の子の誕生を祈る人は絶えず、出生前の性別確認が出来る日はまだまだ遠いでしょう。

Save Daughter Educate Daughter 政策

息子とメイドの子ども。
日本では赤ちゃんは1枚薄着と言われますが、インドでは、赤ちゃんに厚着も厚着! 帽子は必須です。

プロフィール

仲香織

東インド古典舞踊オディッシー舞踊家。

現在ニューデリー在住。京都とカナダでインド舞踊の基礎を学び、その後、インド政府奨学生としてデリーとオリッサに留学。

http://debadhara.com/

 

更新日:2019.06.20