華麗なるインド④

第4回 「サプナ 本八幡店」 ― 牡蠣カレーなど幅広いメニューがある隠れた銘店

我が家の近くには隠れた銘店がある。「サプナ 本八幡店」である。このお店の魅力は、メニューの幅広さにある。北インドのカレーだけでなく南インドのカレーも食べることができ、オリジナルの珍しい牡蠣カレーも提供している。ラッサム・スープ、ティルナン、カラーヒー・チキンなど、日本のカレー屋さんでは少し珍しいメニューも目を引く。「サプナ」はヒンディー語の「サプナー(夢)」を日本人でも発音しやすいようにした名前で、女性の名前にも多く使われる可愛い命名である。

この取材のため伺った際、筆者は南インド風コフタ・カレーと牡蠣カレー、そしてチーズ・クルチャーを注文した。日本ではあまり馴染みがない方も多いかもしれないが、コフタ(コーフター)は東ヨーロッパから西アジアや南アジアにかけて食されている肉団子のことである。北インドではふつうはヴェジタリアンの「マラーイー・コーフター」が人気で、マラーイー(牛乳を温めたときにできる薄い膜)の何とも柔らかい食感が最高なのだが、この店の南インド風のものはタマリンドの酸味をきかせ、ふんわりとフェンネルの香りが隠し味になっている。噛むと酸味と甘味が口の中にじわりと広がり、カレーの辛みとあわさって絶妙なハーモニーを奏でる。

一方、牡蠣カレーはこの店のオリジナルメニュー。最初は期間限定で提供していたそうだが、お客さんからの人気が高く、今は外の看板に常に書くようになったそうだ。ぷりっとした牡蠣には軽やかなカレーの辛みが染み渡り、また、さらさらとしたカレーの中には牡蠣の旨みが染み渡っている。チーズ・クルチャーは香り高く、そのままでも美味しいし、もちろんカレーとの相性も抜群。やみつきになる味である。

店員のバーバル・ハーンさんにお話を伺った。
「サプナ」はもともと両国国技館の近くにあり、1999年に市川駅前に移転してきたそうだ。目印の大きな象のオブジェが印象的な市川店は地元に愛されるようになり、12年前、隣の駅である本八幡駅前にこの支店をオープンした。ハーンさんはデリー出身。23年前に日本に来てから、日本人のオーナーの方と一緒にずっと「サプナ」をやってきた。今はインド人の奥さんと結婚して、お子さん2人と一緒に暮らしているそうだ。
広々とした店内は過ごしやすく、落ち着いた上質な時間を過ごせる。カレーも辛すぎず、日本人の口に合うため、カレー初心者の方も様々なメニューを楽しめるだろう。ご興味ある方はぜひ一度足を運んでみると良いのではないだろうか。

(宮本道人 記)

 

お店の外観。JR本八幡駅から徒歩4分のビル2階。象の看板がオシャレ。

 

お店の入口。シタールが目を引く。看板には沢山のメニューが書いてある。

 

コフタ・カレー、牡蠣カレー、チーズ・クルチャー。店員のハーンさんと。

 

Information: サプナ 本八幡店

予約・お問い合わせ:047-393-5115
〒272-0023千葉県市川市南八幡3-6-17 旭ビル2F
営業時間:日曜~木曜:11:30~14:40(L.O);17:30~22:00(L.O) 22:30まで
金曜・土曜:11:30~14:40(L.O);17:30~22:30(L.O) 23:00まで
定休日:月曜(祝日の場合は営業)

宮本道人(みやもと・どうじん) 略歴

1989年東京生まれ。父と母方の伯父がインド哲学研究者というインド一家に育つ。現在は東京大学大学院で神経科学を研究しながら執筆活動。編著に『プレイヤーはどこへ行くのか』など。主な寄稿先に「ユリイカ」「週刊読書人」。漫画・舞台にも協力。

更新日:2019.07.11