書籍紹介:『タゴール「少年時代」』
『タゴール「少年時代」』
ラビンドラナート・タゴール 著
大西 正幸 訳
A5判・仮フランス装 220ページ
価格 2,000円+税
めこん 2022年10月14日発売予定
http://www.mekong-publishing.com/books/ISBN4-8396-0332-8.htm
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本サイトに、タゴールの回想記『子供時代』の翻訳を掲載する機会をいただき、連載を開始したのが、昨年の5月。1年あまりかけて、この7月に、無事、連載を終えることができました。この間、日印文化交流ネットワーク事務局の皆さん、特にホームページの管理を担当された五十嵐祐子さんには、たいへんお世話になりました。
ところで、今年の3月、大阪・神戸インド総領事館のニキレーシュ・ギリ総領事にお会いした時、この連載の話をしたところ、インド独立75周年・日印国交樹立70周年の記念事業として、この翻訳の出版を一部助成してくださる、という有り難い申し出がありました。さっそくこの件について、めこんの桑原晨さんと相談し、出版を快く引き受けていただきました。(めこんは、東南アジア関係の本の出版で有名ですが、インド関係の本も何冊か出されており、特に、インドの諸言語による文学作品の翻訳シリーズ「現代インド文学選集」は、インド近現代文学の本格的な紹介として、画期的なものです。)
本は、タイトルを『少年時代』に変えて、まもなく出版されます。
この機会に、私は翻訳原稿を再度見直し、連載中には気づかなかった誤りを修正し、新たな情報を加えるなど、訳文・訳註を大幅に書き改めました。また、本文の後に、長い書き下ろしの解説を付しました。解説では、タゴール家の歴史や、タゴールが影響を受けた家族ひとりひとりについて詳述するとともに、当時のカルカッタやタゴール家の雰囲気を伝える写真、リトグラフ、地図等を、随所に挿し挟んでいます。
タゴールのこの回想記は、その文章の美しさ、生き生きとした描写、緻密な構成、どれをとってもたいへん優れた文学作品だと思います。インド好きの読者はもちろん、インドやタゴールの魅力にこれまで触れることのなかった、若い世代の読者の心にも届くように、訳文はもちろんのこと、訳註・解説の細部に至るまで、そうとうに心を砕きました。桑原さんからは多くの編集上のアドバイスをいただき、また装幀家の水戸部功さんは、斬新な装幀に仕上げてくださいました。
この本が、多くの方に読んでいただけることを、切に願います。
著者 ラビンドラナート・タゴール(ベンガル語: ロビンドロナト・タクル)
インドとバングラデシュの国民詩人。近代ベンガル語の韻文・散文を確立、詩・小説・劇・評論・旅行記・書簡など、あらゆる分野に傑作を残した。両国の国歌を含む三千曲あまりの歌曲(ロビンドロ・ションギト)の作詞作曲者、優れた画家としても知られる。
1913年、詩集『ギーターンジャリ』(英語版)によって、ヨーロッパ人以外で最初のノーベル文学賞受賞者となった。岡倉天心・横山大観等と交流があり、日本にも5度訪れている。
自然の下での全人教育を目指して、彼がシャンティニケトンに設立した学び舎は、現在、国立ビッショ=バロティ大学(タゴール国際大学)に発展している。
訳者 大西 正幸(おおにし まさゆき)
東京大学文学部(英語英米文学科)卒。オーストラリア国立大学にてPhD(言語学)取得。専門は、北東インド・沖縄・ブーゲンビル(パプアニューギニア)の危機言語の記述・記録とベンガルの近現代文学・口承文化。
1976〜80年、インド(カルカッタとシャンティニケトン)で、ベンガル文学・口承文化、インド音楽を学ぶ。その後も、ベンガル文学の翻訳・口承文化の記録に携わっている。
ベンガル文学の翻訳には、タゴール『家と世界』(レグルス文庫)、モハッシェタ・デビ『ジャグモーハンの死』(めこん)、タラションコル・ボンドパッダエ『船頭タリニ』(めこん)など。現在、めこんHPに、近現代短編小説の翻訳を連載中。
https://bengaliterature.blog.fc2.com//
(紹介者:大西正幸)
更新日:2022.10.05