仲香織の今どきデリー①
現代インド人のメンタリティ
4月16日と17日、南青山マンダラにて「インド、独り舞ふ Vol.6」という公演が行われました。今回、主催の前田敦子さんのご紹介にて日印文化交流ネットワークがアレンジして下さった新宿にあるお寺・常圓寺様に泊めて頂き、出演の当日朝、デリーから子連れで成田空港に到着した私にとって、非常に有難く、御蔭様でゆっくりと身体を休めて、公演に挑むことが出来ました。
私が、インド政府奨学生として舞踊留学を最初にした2006年からデリーは大きく変わりました。1998年でバックパッカーとしてインドデビューを果たしましたが、その頃と比べると、もちろん雲泥の差である事は言うまでもないのですが、2006年の留学からも早13年、デリー地下鉄は全線開通、UberやOlaが市民の足の1つとなり、OYOの出現、私の当時2500Rsだった月の家賃が、今や10倍になりました。2006年の当時でもカフェなどなかったデリーに、センスの良いおしゃれなカフェがそこら中に出来、インド人の舌も肥え、激マズのレストランを探す方が難しいほどになりました。
私は、デリーでインド舞踊を教えながら、修行を続けながら、さらにオフィスで仕事もしています。エリートインド人達と一緒に仕事をしていると、インド人のメンタリティーも随分変わったなあと実感します。私たち日本人現代人とあまり変わらず、同じレベルの感覚で接する事が出来ています。もちろんさらに若い世代のインド人は、さらに欧米化され、グローバル化の良し悪しをひしひしと感じます。
インド古典舞踊を勉強しているとインド文化や芸術の奥深さに感動します。そして、一生この道に邁進しても、今生では、恐らく行きたい場所に到達する事はないんだろうと感じてしまいます。
しかし、そんなインドの奥深いインド芸術に、都会っ子の若いインド人は、実際あまり興味無し。オフィスでも私がインド舞踊をしている事をFacebookで見て、シンプルに感嘆の嵐です(笑)
もちろん、古典芸能に幼少期から触れ、その道で生きている人は沢山います。ただ、それは、本当に一握り。親に習わされて続けているか、それも大抵は結婚を機にやめてしまいますが、親自体がアーティストか、よっぽどの芸術フリークでない限り、全くの畑違いからこの道に進むインド人は稀だと思います。ヒンドゥーの神様や神話についても、自分の信仰している神様以外にはあまり興味もないし、私よりも知識のない今どきインド人に出会い、びっくりする事も多々あります。
デリーではほぼ毎晩、どこかしらのオディトーリアムで素晴らしい舞踊家や音楽家たちのイベントが開催されています。そして、そのほとんどが無料! インド芸術フリーク日本人からしたら、本当に贅沢な環境で、今どきバーでワイン片手、たばこスパスパのインド人若者達を見ると、勿体ないーーーと叫びたくなります。
先日、雑誌の取材がありました。デリーやグルガオンの都会でインド舞踊をしている外国人がよっぽど珍しいようで、雑誌の表紙にまでなってしまいました。インタビュー内でのコメント「今どきのインド人は古典舞踊や芸術に興味がない。外国人がインドの踊りにこんなにはまっているのを見て、若い世代のインドの方にも、もっともっとその魅力にもっと気付いて欲しい!」
(画像は、中央の私とデリーの生徒の皆さん、インド人主人と息子です)
プロフィール
仲香織(なか かおり)
東インド古典舞踊オディッシー舞踊家。
現在ニューデリー在住。京都とカナダでインド舞踊の基礎を学び、その後、インド政府奨学生としてデリーとオリッサに留学。
更新日:2019.05.08