インド渡航歴40回超! インド・釈尊あれこれ紀行②

理想的な生活

大正大学名誉教授
文京区 光円寺住職 佐藤良純

古代インドでは人の一生の理想的な生活方法として四住期をあげている。

学生期 師のもとでひたすら学業に努める
家住期 結婚し子供を育て、正しく祖先供養を行う
林住期 森に住み修行する
遊行期 一定の住まいを持たず乞食し歩きまわる

各々の時期に努めるべき行動と義務は詳しく定められており、正しく日々を過ごすことが求められる。そして、古代インドではダルマ(宗教的義務)、アルタ(財産)、カーマ(性愛) を満たすことが理想の家庭生活とされていた。

釈尊もこの方法に従い、勉学にはげみやがて結婚する。妃の名前をヤショーダーラと伝えるものが多いが、単に子供ラーフラの母と呼ばれていることもある。

ちなみにラーフラは「月を食べる悪魔(日食、月食)」とされるが、現在でもこ
の名が一般に使われているので、他の意味があるのかもしれない。

そして、母であるヤショーダーラは釈尊出産後七日後になくなり、釈尊は王の後妻マハープラジャーパテイに育てられたと伝えられる。

さて、家長として心がけなければいけないことの第一は、殺生と盗み、嘘をつくこと、他人の妻に近づく事をしてはいけない、ということであると。これは出家者に対する戒と同じ。

次に、太陽が昇ったあとでも寝床にある(寝坊する)、闘争にふける、悪友と交わる、物惜しみ、賭博、酒を飲み夜中に出歩くこと、これらは人を破滅に導くとされる。

一方為すべきことは財産の四分の二を農業と商業に、四分の一を自分で使い、残りの四分の一を貯蓄せよ、とする。

特徴的なのは、夫が妻に奉仕する五つの項目で、尊敬すること、軽蔑しないこと、権威を与えること、金銀の装飾品を与えること、そして他の婦人と出歩かないこと、である。これに対し妻は仕事をよく処理し、親族を良く持てなし、主人以外の男性に心を奪われないこと、財産を保護し、勤勉であることが求められる。つまり、男女平等の考えが強調されている。

こうしたことがしつかり守られれば理想的な生活となることは間違いない。

新郎新婦

神様の結婚

【掲載誌】『浄土』2020年6月号

【著者プロフィール】
さとうりょうじゅん 昭和7年東京生まれ。大正大学 同大学院、インドデリー大学院に学ぶ。昭和34年より大正大学で教鞭をとり、教授、学科長を経て、平成14年退職、大正大学名誉教授となる。インドヘの初渡航は昭和38年、以来インドヘ訪れること、40有余回。著書は『ブッダガヤ大菩提寺』 、『釈尊の生涯』など多数。

☆本稿は月刊誌『浄土』(法然上人鑽仰会)に掲載されたものを、著者の佐藤良純先生と編集長の村田洋一先生の寛大なるご配慮のもとに転載させていただいたものです。ぜひ歴史ある『浄土』誌もこの機会にご覧いただければと存じます。
「法然上人鑽仰会」は、「宗教者という人間としての魅力を社会に広めるために当時の若手僧侶が昭和10年に設立」した歴史ある会であり、今日まで脈々と受け継がれてまいりました。現在、webサイト「じょーど」にて、昭和10年当時の創刊号から現在までの誌面をPDFで公開するなど画期的な発信を続けておられます。その先進性と精神性に敬意を表し、紹介させていただくものであります。

更新日:2021.12.17