「持続可能な開発」ってなんですか。

『全仏婦』2020年新年号より抜粋

 

 

「持続可能な開発」” Sustainable Development” という言葉が、地球規模で使われるようになってから30年近くになります。私が大学生だった頃は存在しない概念でしたので、
40才頃「持続可能な開発」に大学院で出会って、知らないテーマに戸惑いを覚えました。

「持続可能な開発」は1987年にノルウェーの女性大統領・ブルントラント氏が委員長を務めた国連の「環境と開発に関する世界委員会」が出した報告書” Our Common Future”で
初めて強調されました。以来国連の環境保護の基本的な考え方の一つになっています。特に、1992年にリオデジャネイロで国連環境開発会議(UNCED)いわゆる「地球サミット」が開催された時に、「持続可能な開発」を人類共通命題として掲げました。

そして、2015年に国連が設定した「持続可能な開発目標」(SDGs)は、今や山手線でも全車両が(SDCs)のポスターで埋め尽くされるほど市民権を得てきました。しかし、ここで注意しなければいけないことは、「持続可能な開発」という漢字に納得してその真の意味を理解することなく、(SDGs)に取り組んでもあまり効果が期待できないのではないでしょうか。

では、「持続可能な開発」とは如何なる概念なのでしょうか。『全仏婦』に掲載された5コマの記事にも記されているように、子や孫の世代の要求を満足させ、尚且つ現代の人々の要求も満足させるために、環境容量を自覚して、日々の生活スタイルを変える努力や、企業ならば、生産方式を変える努力をして環境を利用していこうという考えです。この概念は、環境と開発を互いに反するものではなく、共存し得るものとしてとらえています。

更に申し上げるならば、限られた資源の中で、エネルギーの浪費や飽くなき要求に歯止めを掛け、供給を上回る需要を控えるべきとするスタンスです。我慢を強いるのではなく、無駄のない生活が希望につながると、「貪欲な生活」から「足るを知る生活」へパラダイムの転換をはかることが肝心なのです。

幸い仏教には仏陀が2500年前に諭された「少欲知足」の教えがあります。欲望が大きくなればなるほど、人は苦しむものであると教えています。従って、際限のない欲望を抑え、
与えられたことに満足する。即ち、「少欲知足」の姿勢が幸福感につながるということです。

尚、(SDGs)は2030年に向けて「地球上の誰一人取り残さない」” Leave no one behind”をスローガンに掲げていますが、仏教では一人も漏らさず救い上げるために仏像の手に水かき(まんもんそう)があります。仏教は国連のスローガンを悠久の昔から体現してきたといえます。

環境、健康、貧困などの問題を個別に考えるのではなく、「持続可能な開発」という広い視野をもって総合的に解決していく心構えで、(SDGs)に取り組んでまいりましょう。

 

丸山弘子(まるやま ひろこ)
1957年東京生まれ。早稲田大学大学院修了。
2013年バンコクで開催された世界仏教徒会議で「環境と仏教」について発表。
2019年インド大使館で開催された国際婦人デーで「仏教と女性」について講演。
全日本仏教婦人連盟常務理事。国際仏教文化を学ぶ会役員。京都・観光文化検定1級
取得。

更新日:2020.01.24