日印文化交流ネットワーク発会式の報告

先にお知らせしました日印文化交流ネットワークの発会式が、2017年11月30日、東京千代田区の学士会館において執り行われました。式典には、多忙の中、在日インド大使館よりご列席くださった駐日インド大使スジャン・R・チノイ閣下、文化・情報担当のムアンプイ・サイオイ一等書記官を始めとして、日印両国の交流に関わる諸団体の代表55人が参集、本ネットワークの発会に至る経過報告ならびに来賓祝辞、ネットワークの主要な活動の場となるwebサイト「つながる・インディア!」の紹介などに耳を傾けました。

ここでは、第一部の各氏のスピーチ内容の概要紹介を中心に、発会式の様子を報告いたします。

発会式の開式にあたり、司会を務めた荒木幹事による趣旨説明に続き、本ネットワークの世話人代表・奈良康明駒澤大学名誉教授からのビデオ・メッセージ(入院療養中のため用意されたもの)が上映されました。

ビデオ・メッセージでは冒頭、今回立ち上げることとなったこの「日印文化交流ネットワーク」は、今の時点でどうしても必要な企画であると考えて準備してきたものだということが語られました。奈良代表は、自身のインド留学時の経験などを交えながら、「一時大変隆盛であったインドの学術・文化・芸術に関する研究が、今日は少し退潮気味であるように見えるが、それは活動の中心が民間の個人に移ったためだと思われる。多くの人がインドに関心を持ち、その文化・芸術に触れる機会の多い今日においてこそ、日印文化交流に携わる人々や諸団体を一つにまとめ、有機的につなぎ合わせるネットワークが必要であり、多くの人にぜひこのネットワークを利用していただき、より多くの人がインドの文化に親しんで貰えるようにしていきたい」と述べて、ネットワーク発足の意義を強調しました。

続けて、本ネットワークの代表幹事・山田一眞師より、ネットワーク発足にいたる経緯についての説明がありました。山田師は「同じくインドに思いを持っている方々が、一つのプラットフォームのもと情報の共有をし、その情報をお互いに利用しあいながら、日印の文化交流を一層濃厚なものとしていただく一助となれば」と語り、今後順次webサイトを充実させ、日印の文化交流が発展のために貢献していく決意を述べました。

以上で主催者側からの話が終わり、来賓の祝辞に移りました。

最初にスジャン・R・チノイ駐日インド大使がスピーチに立ちました。大使は奈良代表のビデオ・メッセージに感銘を受け、用意してきた原稿を後回しにして奈良代表のメッセージに答えました。

「日印関係はこれまでも良好でしたが、両国のパートナーシップは今日、これまで以上に良好かつ重要なものとなっている。それだけに、奈良代表のメッセージにあった『今日の日印の学術・文化面での交流は一時にくらべ幾分退潮気味だ』との指摘には大いに衝撃をうけました。ぜひ日印文化交流ネットワークの活動により、この矛盾を克服して貰いたい。」

また大使はインドの文化を学ぶことの重要性と日本におけるインド研究の厚みについて言及しました。

「アジアに波及したインド文化の影響の大きさを鑑みれば、インドを知らずしてアジアを語ることはできない。日本は遙か昔から、仏教を通じてインドに関心を寄せ、その文化を学びとり、自らの文化伝統のなかで消化・発展させてきた。先日上演された歌舞伎マハーバーラタは、インド本国でもこれほどのものは見ることができない、というほど素晴らしいものであった。日本人の中にインドに対するこのような深い理解が生まれたのは、学術研究に携わる人たちの長年にわたる研究の厚みに負うところが大きく、研究者の方々には心からの敬意を表したい。」

大使はさらに続けます。「文化交流は決して一方的であってはならない。100年以上もむかし、ヴィヴェーカーナンダ師はシカゴ宗教会議の帰路、日本に立ち寄った際に、友人に宛てた手紙に「インドの若者はみな日本を訪れて学ぶべきだ」と書いたが、今日、多くのインドの若者が文化交流・学術交流そして政府の技能研修プログラムを通じて日本を訪れ学んでいることはとても喜ばしいことだ。」

最後に「こうした状況下で、このような素晴らしいプラットフォームを立ち上げた奈良代表を初め、日印文化交流ネットワークの会員の皆さんにお祝いを申し上げたい。大使も大使館スタッフも皆様に協力する準備ができている」と述べて祝辞を締めくくりました。

以下、三名の来賓からいただいた祝辞の概要を紹介します。

平林 博 氏(公益財団法人 日印協会・理事長)

日印協会は、日印両国に外交関係がなかった時代から100年余に渡って両国の交流に尽くしてきたが、その活動はややもすると政治・経済の面に偏りがちで、文化面での活動はあまり活発ではなかった。これまでは会員の諸団体の支援をすることで文化面に寄与しようとしてきたが、十分でない部分もあった。

インドは「最後の超大国」ともいうべき国であり、この国との友好関係は日本にとって今後ますます重要性を増していく。今後は日印文化交流ネットワークとも連携をとりながら、文化面の活動にも力を入れていきたいと考えている。

久喜和裕 師(全日本仏教会・事務総長)

全日本仏教会は伝統仏教界の諸団体を結ぶネットワークとして活動してきた。会員の中には国際仏教興隆協会、全日本仏教婦人連盟を始め、インドにおいて慈善活動に携わる団体があり、今後はその活動支援を強化していくことも検討すべきと考えている。また日本からのインドの仏跡参拝者が年々減っていると言われることに対して、何かできることがあるだろうか、とも考えている。日本とインドの関係は仏教があってこそのものであろう。

ネットワークや他の諸団体とも連携しながら、日本の仏教界として、国際協力の方面で何ができるかということを考えていきたい。

前田專學 氏(公益財団法人 中村元東方研究所・理事長)

公益財団法人中村元東方研究所の創立者である中村元先生が日印文化協会を設立し、一定の役割を果たした後に活動を休止してから久しいが、今回こうして、同協会の活動を発展的に継承する会の発足を、日印文化協定締結60周年の今年見ることができたことはまことに慶ばしいことで、中村先生もさぞやお喜びのことと思う。

広大にして多様性に富むインドは、上からの力による強制や権力や武力ではなく、ダルマによって統一を保っている驚くべき国であり、世界の未来の行く末を指し示す縮図でもあり、また道しるべともなる国といえる。日本にとってもますます重要な国となることは間違いない。

日印協会様やその他の関係団体と緊密な協力関係をたもちながら、着実に発展されることを願う。

来賓祝辞に引き続き、ネットワークの五十嵐祐子幹事から、日印文化交流ネットワークの公式webサイト「つながる・インディア!」の紹介がありました。

式典はその後、休憩を挟んで第二部の祝賀会に移りました。祝賀会では世話人の松久保秀胤師(薬師寺長老)の音頭による乾杯の後、以下の7人の方々からご挨拶をいただきました。

  • 全日本仏教婦人連盟・理事長 末廣久美 氏

  • 日本仏教保育連盟・副理事長 高山久照 氏

  • ディスカバー・インディア・クラブ・副会長(会長代理)金子延康 氏

  • 在日インド商工協会・理事長 Jagmohan S Chandrani 氏

  • ミティラー美術館・館長 長谷川時夫 氏

  • 早稲田大学・講師 藤倉健雄 氏

  • 国際仏教交流協会・事務総長 佐藤雅彦 氏

最後に、鹿子木世話人(日印協会・顧問)より閉会の挨拶をいただき、閉会となりました。

 

更新日:2017.12.28