カンチェンジュンガとの出会い-西ベンガル州・ダージリン
インド北部、そして標高約2,000メートルの高地にある街ダージリン
この街に立ち寄ったのも不思議な縁であった―インドに入国する約2ヶ月前、私はタイのバンコクに居た。そこで或る日本人旅行者に出会い、彼からダージリンという名前を初めて聞かされ、そこに行くには世界遺産でもあるトイ・トレインに乗る事を薦められた。
しかし今思うに彼が何故、世界第3峰のカンチェンジュンガの事を口にしなかったのが不思議である。
到着してから暫くは雨ばかりで緑の山々の上空にはもったりと重たい霧がいつもかかっていた。そんな訳で私も世界で3番目にこの高い山の存在に全く気付かずに4日間過ごしていたのは今思うと笑い話である。
滞在5日目の早朝5時、宿の同部屋の日本人男性に叩き起こされ、彼はとても興奮した様子で兎に角急いで宿の屋上に来てくれと言う。私は半分寝ぼけた頭で何事が起こったのか訳も分からず彼に着いて行き、宿の5階にあたる屋上に上がった瞬間、あっ、と息を呑んだ。
そこにはこれまで霧に隠れていた部分が見事に澄み渡り、カンチェンジュンガの姿が突然、目の前に現れたからだ。
手を伸ばせばすぐそこに届きそうなぐらいであった。
その姿は雄大で実に美しく、そしてこのヒマラヤを越えた向こう側にはチベット-そう、私がこの1年後に訪れることになった-チベットを初めて意識した瞬間であった。
山崎 真(Shin Yamasaki)
写真家
1974年長崎市生まれ
大学卒業後 北米、オランダに渡航。現地に滞在しながら周辺各国を周る。
20代後半に1年3ヶ月アジアを旅し、うち4ヶ月インドに滞在。
2014年から月刊誌「在家佛教」の表紙及び表紙の話を3年間連載し写真と文章を通してアジアと関わり続けている。
ホームページ http://www.shinyamasaki.com
更新日:2018.11.15