アジャンター石窟群から「宮廷の恋」
ブッダには多くの「ジャータカ(前生の物語)」が存在する。
ブッダの前生の姿であるマハーシャーナカ王子が、世俗の欲を捨て出家しようとしたとき、妃・シヴァリーが出家を思いとどまらせようとするが、出家の志が固い王子はゾウの背に乗って王宮を去ってしまった。そこで妃は、深く絶望し、やがて奴隷たちに囲まれて快楽に溺れていく。これはその一場面を描いたものである。
アジャンター石窟群は、インドのマハラーシュートラ州北部、ワーグラー渓谷にある古代の仏教石窟寺院群。「宮廷の恋」は石窟寺院群の第1窟にある壁画である。
松本 榮一(Eiichi Matsumoto)
写真家、著述家
日本大学芸術学部を中退し、1971年よりインド・ブッダガヤの日本寺の駐在員として滞在。4年後、毎日新聞社英文局の依頼で、全インド仏教遺跡の撮影を開始。同時に、インド各地のチベット難民村を取材する。1981年には初めてチベット・ラサにあるポタラ宮を撮影、以来インドとチベット仏教をテーマに取材を続けている。主な出版、写真集 『印度』全三巻、『西蔵』全三巻、『中國』全三巻(すべて毎日コミニケーションズ)他多数
更新日:2020.05.01