路地裏をゆく—ウッタル・プラデーシュ州・バラナシー
バン、バン、バンと何かを叩く音で目が覚めた。
その当時、私はガンジス川沿いにあるホテルに宿を取っていた。ホテルと言っても日本円にして1泊千円もしない程度の共同部屋—いわゆるドミトリーである。
個室ではないが、この宿のいいところは、横一列にずらりとベッドが並び、そしてどのベッドからもガンジス川が望めるというリバービューであった。
空が白み始める頃、外から聞こえてくる何かを叩く音—これは数名の洗濯屋が一定の間隔で並び、洗濯板の代わりにした石に洗濯物を叩いて洗っている音であった。この音と共に私のバラナシーでの1日が始まるのであった。
朝食後、ガンジス川に沿って広がる迷路のような狭い路地に向かう。無数に入り組んだ路地を歩くと初めの内は自分がどこを歩いているのかさえよく分からなくなったりするが、歩いている内に、ある路地に入ると見覚えのある路地に出たりするなどし、「なるほどここはこの路地と繋がっているのか」という発見があり、歩いていて実に面白い。
路地の一角には雑貨屋などがぎっしりと立ち並ぶ通りがあったり、狭い路地にも関わらず我が物顔で牛がのろりと歩いていたり、バイクが走っていたり、ふとした所に何かの祠があったり、チャイ屋やジューススタンドがあったりと、そんな路地歩きは飽きる事がない。
そして、路地裏と言えばやはり主役はそこで遊ぶ子供達である。
私を見つけると何処からともなく写真を撮ってくれと遠くから走ってきたり、わざわざ家の中から兄弟を呼んで撮影をせがんだり、かと思うとカメラを向けるとはにかむ少年や少女が居たりと-そう、やはりバラナシーは路地裏が面白い。
山崎 真(Shin Yamasaki)
写真家
1974年長崎市生まれ
大学卒業後 北米、オランダに渡航。現地に滞在しながら周辺各国を周る。
20代後半に1年3ヶ月アジアを旅し、うち4ヶ月インドに滞在。
2014年から月刊誌「在家佛教」の表紙及び表紙の話を3年間連載し写真と文章を通してアジアと関わり続けている。
ホームページ http://www.shinyamasaki.com
更新日:2018.04.26