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ラージャスターン物語 4

アンベール城への象のタクシー

アンベール城

近世に入ってから、ラージャースターン地方には、メーワール(ウダイプル) 、マールワール(ジョードプル)、アンベール(ジャイプル)の三つの王国が鼎立し、それぞれ多くの豪族たちを従え、覇権を競ってきた。

アンベール城は山と丘陵に囲まれた天然の要害で、カチワーハ一族はここに城塞を築き、領地を増やしていき、アンベール王国を作った。現在残るアンベール城は、後世の王たちによって大規模に増築されたものだ。そこへシルクロードのサマルカンドから圧倒的な武勇のイスラーム軍団が攻め込む。そしてデリーにムガル帝国が成立した後ラージプート諸王家の大半は、ムガル帝国に服属していった。なかでもアンベール王国は積極的にムガル帝国成立に貢献した存在であった。

16世紀、ムガル皇帝第三代のアクバルに仕えたアンベールの王マーン・スィン1世は、ムガル帝国の発展とともに、その活躍の基盤を拡大していき、他のラージプート王家に比べて、別格の地位を築いていった。ムガル皇帝のアクバルとともに、南のマラーター同盟軍との戦いで活躍したのだった。そして、娘をムガルの帝室に嫁に出したり、姻戚関係を結び、勢力を伸ばしていった。この婚姻によって、アンベール王家とムガル皇帝との関係は非常に強固なものになったのだった。これが、アンベール王家の歴史の重要なポイントで、単純に「イスラーム勢力に征服された」というより、アンベール王家はムガル帝国の支配秩序の中に入り、その軍事力と政治力を利用して王家の地位を大きく高めたのだった。そしてアンベールの歴代の王達は、ムガル帝国軍の先峰になって南インド征服のために戦い続けた。歴代のアンベール王の多くは、自らの宮殿ではなく、各地の戦場で亡くなったと伝えられている。

次のサワーイー・ジャイ・スィンの時代は、すなわち、アンベールから、ジャイプルに遷都したころから、ラージプートの各王家で名実ともに第一の地位を築いていった。この城は、まだ絶頂期を迎える前の戦国時代に建てられたもので、ジャイプル市内にある宮殿に比べると、まさに戦うための城であり、巨大な戦う山城である。この城を守るために尾根に沿っていくつもの出城がつくられ、その一つナーハルガル要塞から見下ろす夜景は、ジャイプルの街の明かりが、まるで真珠の入った宝石箱をぶちまけたようで美しい。

文・写真:©松本 榮一(Eiichi Matsumoto)
写真家、著述家

日本大学芸術学部文芸学科を中退し、1971年よりインド・ブッダガヤの日本寺の駐在員として滞在。4年後、毎日新聞社の依頼で、全インド仏教遺跡の撮影を開始。写真集『インド』全三巻を毎日コミュニケーションから刊行。のち、インド各地に散らばる亡命チベット人の難民村を取材する。1981年には初めてポタラ宮を撮影、写真集『西蔵』にまとめる。以来インドとチベット仏教をテーマに取材を続けている。
主な出版、写真集 は『祈りのブッダ』奈良康明文、松本榮一写真(NHK出版、1999年)
『インドおもしろ不思議図鑑』松本榮一、宮本久義編著(新潮社、1996年)
『死を待つ家』松本榮一著(メディアファクトリー、1999年)
『ガンガー 母なるインドの聖河』松本栄一写真集(丹陽/雄山閣、2002年)
『東北大学所蔵 河口慧海請来チベット資料図録』(佼成出版社編刊、1986年)
図録『甦るパリ万博と立体マンダラ展』(西武百貨店、1989年) 他

※文および写真の転載を禁じます。

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更新日:2026.10.01

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