バックウォーターの朝-ケーララ州・アレッピー
南インド、タミルナドゥ州の南端カーニャクマリから車を飛ばし隣の州、ケーララ州までやってきた。
時間にしておよそ7時間ほどの旅、時間の節約の為とは言え列車で移動するよりも遥かに早く移動ができた。
今回の目的地は海から内陸地へと流れ込んだ水が無数の運河に分かれている、いわゆるバックウォーターと呼ばれる水郷地帯である。
そしてここはその旅の拠点となるケーララ州中部の町-アレッピーである。
バックウォーターの事は以前から旅行者の間でも噂になっており、そこでのクルーズはまさに楽園のような時間だと聞かされていた。実際にクルーズに参加してみると、ボートは水面を滑るようにゆっくりと進み、その周辺に暮らす人々の生活を垣間見る事ができ、時には対岸や行き交う船からみなこちらに手を振ってくれると言う実にのんびりとしたものであった。
そして夕暮れ時に水辺に沈みゆく夕日を眺め、夜には船に寝転び無数の星たちを眺め、正に楽園とはこのような所の事を言うのだな、なんて事を思ったりもした。
1日だけのクルーズもあるのだが、私は船内で宿泊できるクルーズを選んだ。
翌朝まだ日が完全に昇りきる前、朝靄の中どこからか聞こえてくる鳥の声や椰子の木がさざめく音を聞いていると、突然雨が降り出し-いわゆるスコールだ-そしてそのスコールがこれまた突然終わったかと思うと空が急に白み始め、また、ここバックウォーターでの新しい1日が始まった。
そこで見た景色はまさに南アジアを感じさせてくれる、或る独特の匂いのある朝の風景であった。
山崎 真(Shin Yamasaki)
写真家
1974年長崎市生まれ
大学卒業後 北米、オランダに渡航。現地に滞在しながら周辺各国を周る。
20代後半に1年3ヶ月アジアを旅し、うち4ヶ月インドに滞在。
2014年から月刊誌「在家佛教」の表紙及び表紙の話を3年間連載し写真と文章を通してアジアと関わり続けている。
ホームページ http://www.shinyamasaki.com
更新日:2018.08.15