たゆたう流れ—ウッタル・プラデーシュ州・バラナシー
ネパールの首都・カトマンドゥからバスに乗り国境を越え、インド側の国境の街・スノウリへ。ネパールから乗ったバスの屋根には何故か大量の”ひよこ”が積まれており、沢山の”ひよこ”と共にインド入りを果たした。
スノウリに1泊し、そこからツーリストバスを探したが見つからずバラナシーまでは結局ローカルバスでの旅となった。
バスを探すのにも時間が掛かったせいか、バラナシーに到着した頃には夜になっていた。しかも、運悪くこの日は街全体が停電してしまっており、真っ暗。迷路のような路地裏を注意深く進み-時には野良犬を踏んだりせぬよう-目当ての宿を目指してガンジス川の方へ歩いて行く。
バラナシー初日のイメージでは、目の前にどーんとガンジス川が広がり、遂にインドにやって来た、と感慨深くなる自分を想像していたのだが、その日は結局真っ暗で何も見えず、感慨に浸る事はできなかった。
旅とは時としてこのようなものである。
さて、バラナシーの街の事をある旅行者は、「インドが詰まっている」と表現していた。確かにそうかもしれない。我々、一般の旅行者が抱くインドのイメージ-道々を歩く野良牛や、佇む物乞い、街中に溢れるインド音楽、そして車線などお構いなしにひた走るオートリキシャや車などなど、これらが渾然一体となって我々旅行者を取り囲んでいる-そんな街である。
しかし、そのような喧騒などお構いなく、穏やかに、そして緩やかにガンジス川は今日も流れている。
山崎 真(Shin Yamasaki)
写真家
1974年長崎市生まれ
大学卒業後 北米、オランダに渡航。現地に滞在しながら周辺各国を周る。
20代後半に1年3ヶ月アジアを旅し、うち4ヶ月インドに滞在。
2014年から月刊誌「在家佛教」の表紙及び表紙の話を3年間連載し写真と文章を通してアジアと関わり続けている。
ホームページ http://www.shinyamasaki.com
更新日:2018.03.14